かつて劇作家オスカー・ワイルドはこんな言葉を残しました。

「若い時の自分は、金こそ人生で最も大切なものだと思っていた。今、年をとってみると、全くその通りだと知った」

お金はいくら貯めておいても損はありません。しかし多くの人が「いくら貯めればいいのか」「なぜ貯まらないのか」という漠然とした不安を抱えながら、日々の家計管理に苦戦しています。

その不安を解消する鍵は、今、自分が人生のどのフェーズにいるかを正しく認識することにあります。人生には、面白いようにお金が貯まる「貯め時」と、どうしてもお金が出ていく「かかり時」が存在します。

このフェーズの認識を誤ると、人生の後半戦がハードになります。逆に、今がどちらの時期かを知るだけで、家計管理のストレスは劇的に軽減されます。


1. 人生に3回やってくる「貯め時」を逃すな

効率的にお金を貯められる時期は、人生に3回あります。この「追い風」が吹いている時期にどれだけ資産を積み上げられるかが、将来の明暗を分けます。

① 就職から結婚まで(独身・DINKS時代)

最初の貯め時は、社会人になってから結婚するまでの独身時代です。

若い頃は給料こそ少ないかもしれませんが、生活コストを自分一人の裁量で抑えることができます。何にいくら使うかを100%コントロールできるこの時期は、資産形成において「最強のフェーズ」と言っても過言ではありません。

また、結婚しても子供がいない**DINKS(共働き・子供なし)**の家庭も絶好の貯め時です。夫婦二人の収入がありながら教育費がかからないため、貯める力が強い夫婦なら数年で1,000万円を超える貯蓄を達成することも珍しくありません。

② 子供が小学校中高学年〜高校生まで

子供が生まれると、出産費用や時短勤務による収入減でお金が貯まりにくくなる時期があります。しかし、子供が小学校中高学年から高校生になるくらいまでは、再び貯め時がやってきます。

後述する「大学進学」という最大の支出ピークに備え、この数年間でいかに「貯蓄のダム」を作っておけるかが重要です。

③ 子供の独立後から退職まで

人生最後の「ボーナスタイム」が、子供が独立してから退職するまでの期間です。

現役世代として給料が比較的高水準にある一方で、子供の教育費・生活費の負担がガクンと減ります。ここで最後のスパートをかけることで、老後の安心感を決定づける資産を築けます。


2. 貯金を削り取る「かかり時」の正体

一方で、どうしてもお金が出ていく「かかり時」も存在します。この時期に「貯まらない」と悩むのは、ある種当たり前のことです。

大学進学:貯金を削るブルドーザー

支出の最大のピークは、子供が大学に入った頃です。

ある親御さんはこの時期の支出の激しさを「せっかく貯めたお金をブルドーザーで削り取られるようだった」と表現しました。授業料だけでなく、一人暮らしの費用や塾代など、驚くほどの勢いでお金が出ていきます。

この時期に無理に貯金しようとするより、「今はそういう時期だ」と割り切る心の準備が必要です。

老後と不測の事態

退職後は、基本的には収入が減り、貯金を切り崩していく「かかり時」に入ります。それまでにどれだけ準備できたかによって、老後の生活水準が決まります。

また、自己投資(転職・起業)のための学びや、家族の介護など、予期せぬ「かかり時」が訪れることもあります。これらは資産形成のスピードを遅らせますが、人生においては必要な支出です。


3. フェーズに合わせた家計管理の極意

一般論として「収入の8割で暮らす(2割を貯蓄する)」が理想とされています。しかし最も注意すべきなのは、この「2割」という数字を機械的に当てはめないことです。

「貯め時」は徹底的に貯める

今が「貯め時」なら、2割と言わず3割でも5割でも、追い風を最大限に生かして資産を増やしましょう。

「あの時もっと貯めておけばよかった」というのは、人生の先輩たちが口を揃えて言う後悔の言葉です。貯められるうちにしっかり貯めておくことが、後々の人生を楽にします。

「かかり時」は無理をせず耐える

今が「かかり時」なら、2割の貯蓄が難しくても自分を責める必要はありません。1割でも貯蓄できていれば十分です。

かかり時は、資産を「増やす」ことより「大きく減らさない」ことを意識しましょう。嵐の中では無理に進もうとせず、辛抱強く耐えること。いずれ嵐は止み、また前進できる時が必ずやってきます。


4. 大富豪が教えてくれる「本当に大切なこと」

資産形成に励む中で、忘れてはならない視点があります。多くの億万長者たちが口を揃えて言うのが、**「本当に大切なことには、実はお金はかからない」**という事実です。

家族や友人と素晴らしい時間を過ごしたり、心穏やかに日々を送ったりするために、必ずしも莫大な資産が必要なわけではありません。

「収入の8割」の範囲内で、いかに人生を楽しみ、身近な幸せを大切にできるか。このマインドセットを持っている人は、どのフェーズにいても幸福度を維持できます。


まとめ:自分のおでこに「シール」を貼ろう

今の自分は「貯め時」なのか、「かかり時」なのか。自分のおでこにシールを貼っているとイメージしてみてください。

フェーズやること
🟢 貯め時追い風をフル活用。3〜5割を目標に資産の土台をガッチリ固める
🔴 かかり時無理をしない。1割でも貯蓄しながら、嵐が過ぎ去るのを待つ

自分の立ち位置を正しく認識すれば、他人と比較して焦ったり、貯まらない家計にイライラしたりすることもなくなります。

人生の各フェーズに合わせた柔軟な戦略を持って、賢く、そして心豊かにお金と付き合っていきましょう。