「絶対に儲かります」というSNS広告、突然スマホが圏外になる不具合、マッチングアプリで出会った優しい相手からの投資の誘い——。一見バラバラに見えるこれらは、いずれも近年被害が急増しているネット詐欺の入り口です。
手口は年々巧妙になり、生成AIまで悪用されるようになりました。「自分は大丈夫」と言い切るのが、年々難しくなっています。ですが、逆に言えば手口をあらかじめ知っておくことが、いちばん確実な防御になります。
この記事では、2026年にとくに警戒したい3つの手口——「SNS型投資詐欺」「SIMスワップ詐欺」「ロマンス詐欺」——について、それぞれ手口の流れ → 見分け方 → 対策の順にまとめました。最後に、3つに共通する「だまされないための鉄則」と、高齢の家族を守るための具体策も紹介します。
なお私は、セキュリティの専門家ではありません。製造現場で長くPCの管理を担当していた、というだけの立場です。職場では**偽の不審メールが抜き打ちで送られてくる「標的型メール訓練」**が定期的にありましたが、私はそれを実施する側ではなく、訓練を受ける側でした。ただPCの担当をしていた関係で、迷った人から相談を受けたことはあります。訓練を受ける側であり、聞かれる側でもあった——その位置から書きます。
手口① SNS型投資詐欺(AIディープフェイクにも注意)
新NISAをきっかけに投資を始める人が増える中、その関心の高まりに目をつけたのが「SNS型投資詐欺」です。SNSの広告やメッセージを入り口に、投資名目でお金をだまし取ります。
手口の流れ
- SNSの広告や投稿で「絶対儲かる」「元本保証」といった投資話を目にする
- 興味を持つとLINEなど外部アプリのグループや個人アカウントへ誘導される
- グループ内で「儲かった」という報告やスクリーンショットが次々に共有され、信じやすい空気が作られる
- 「今だけ」「限定枠」とあおられ、指定の口座やアプリに入金してしまう
- 出金しようとすると「手数料」「税金」などの名目で追加入金を求められ、最終的に連絡が取れなくなる
近年もっとも警戒すべき変化が、生成AIによる「ディープフェイク動画」の悪用です。実在する経営者や著名投資家の顔と声を学習させ、本人が「この投資法で資産を増やした」と語っているかのような偽動画を作り、SNS広告として流す手口が確認されています。話し方の癖まで再現されることもあり、「動画で本人が話しているから本物だろう」という思い込みはもう通用しません。
見分け方
- 「元本保証」「絶対に儲かる」など断定的な表現で勧誘してくる
- SNSの広告やDMから、LINEなど外部アプリのグループへ移動をすすめられる
- 著名人が登場する投資動画だが、その人の公式サイトや公式SNSでは同じ発言が確認できない
- 出金しようとすると、手数料・税金・保証金などの名目で追加入金を求められる
- 業者名や運用会社名で検索しても、金融庁の登録情報が見つからない
対策
- 日本で投資の勧誘をする業者は金融庁(財務局)への登録が義務。勧誘元を金融庁の登録業者一覧で必ず確認する
- SNS広告・DM経由の投資話は「知らない相手からの声かけ」と割り切る。実在の金融機関が個別DMで非公開案件を持ちかけることは通常ない
- 「詳しい話はLINEで」という外部アプリへの誘導は典型的なパターン。とくに警戒する
手口② SIMスワップ詐欺(スマホの番号そのものを乗っ取る)
あまり聞き慣れないかもしれませんが、被害に遭うと銀行やSNSまで一気に乗っ取られる危険な手口です。攻撃者があなたの電話番号そのものを自分のSIMカードに移し替えてしまいます。
手口の流れ
- 攻撃者がSNSなどから、あなたの名前・住所・生年月日・契約キャリアといった個人情報を集める
- 偽造した身分証を使い、携帯キャリアに「SIMをなくした。番号を新しいSIMに移してほしい」と申請する
- 本人確認を突破されると、あなたの電話番号が攻撃者のSIMに移ってしまう
- 攻撃者はSMSで届く2段階認証コードを受け取れるようになり、銀行・証券・SNSのアカウントに次々と不正ログインする
怖いのは、多くのサービスが本人確認をSMSに頼っている点です。番号を奪われると、その認証の壁がまるごと突破されてしまいます。
見分け方(予兆)
SIMスワップ詐欺は、スマホに現れる「異変」で気づけるのが特徴です。
- 急にスマホが圏外になり、電話もSMSも使えなくなる(番号が移された合図の可能性)
- 身に覚えのない認証コードやパスワード変更の通知が届く
- 各種サービスに突然ログインできなくなる
とくに「原因不明の圏外がしばらく続く」ときは要注意です。
対策
- SMS認証に頼りきらない。 認証アプリ(ワンタイムパスワード)やパスキーが使えるサービスでは、そちらに切り替える。ただし全部を一度に変える必要はない。まずはお金が直接動く銀行・証券からで構わない(詳しくは現代のセキュリティ新常識でも解説しています)
- 携帯キャリアの契約に暗証番号(PIN)を設定し、SIM再発行時の本人確認を強化する。SIM再発行やMNP時に通知を受け取る設定も有効
- SNSで生年月日・住所などを公開しない(本人確認になりすましで悪用されるため)
- 圏外が続いたら、すぐに携帯キャリアへ連絡し、回線の一時停止やSIMの無効化を依頼する
ここまで書いておいて正直に打ち明けると、私自身、ここに挙げた対策を最初から全部やれていたわけではありません。この記事をきっかけに、自分の設定を見直すことになりました。
私が使っている金融機関は、地方銀行が1つ、ネット銀行が3つ、証券会社が1つの計5つです。証券会社とネット銀行の1つは以前から2段階認証を設定していましたが、残りの3つは設定していませんでした。携帯キャリアの暗証番号(PIN)も、あわせて設定しました。
認証の方式も、認証アプリで数字を出すものとSMSで受け取るものが混在しています。つまり、この記事で自分が挙げた「SMS認証に頼りきらない」を、私はまだ全部は実行できていません。
やってみた実感として、設定そのものは1つあたり数分で終わります。ただ、数が多いと単純に面倒です。もし使っていない口座があるなら、認証を設定する前に解約してしまうほうが早いかもしれません。守る先を減らすこと自体が、そのまま対策になります。
手口③ ロマンス詐欺(恋愛感情につけ込み、最後は投資へ)
マッチングアプリやSNSで恋愛感情を装って信頼させ、最終的にお金や投資を要求するのがロマンス詐欺です。近年は「恋愛 × 投資」を組み合わせた形が増えています。
手口の流れ
- マッチングアプリやSNSで知り合い、毎日連絡を取り合って親密になる(会うのは巧みに避ける)
- 十分に信頼関係ができたころ、「2人の将来のために」と投資や資産形成を持ちかけてくる
- 相手に勧められた投資アプリに登録すると、運用益が上がっているように見せかけられる
- 「もっと入金すれば増える」と促され、大金を入れたところで相手も資金も消える
このように、まず信頼させてから大金を奪う手口は、海外で「pig butchering(豚の飼育に例えた呼び方)」とも呼ばれます。近年は生成AIで作った写真やメッセージを使う例もあり、巧妙化しています。
見分け方
- 会おうとすると理由をつけて避け続ける/ビデオ通話も断られる
- 親密になったタイミングで投資・副業・仮想通貨の話を持ちかけてくる
- 「必ず儲かる」「専用アプリで運用できる」と、うまい話とセットで勧めてくる
- プロフィール写真が、実は他人の使い回しである
対策
- 会ったことのない相手には、理由が何であれお金を送らない
- ネットで知り合った相手から投資や副業を持ちかけられたら、まず詐欺を疑う
- 相手のプロフィール写真を画像検索にかけ、他サイトからの使い回しでないか確かめる
3つに共通する「だまされないための鉄則」
手口は違っても、詐欺が狙う心理は共通しています。次の鉄則を覚えておいてください。
| 鉄則 | なぜ効くのか |
|---|---|
| うまい話・急かす話はいったん立ち止まる | 「今だけ」「あなただけ」は冷静な判断を奪う常套句 |
| SMSだけの認証に頼らない | 認証アプリ・パスキーは番号を奪われても突破されにくい |
| 知らない相手にお金を送らない | 投資も恋愛も、送金を求められた時点で疑う |
| 相手・業者を公式な情報源で確認する | 金融庁の登録一覧、画像検索、公式サイトで裏を取る |
| 一人で決めず、誰かに相談する | 口に出すだけで「おかしい」と気づけることが多い |
訓練メールで実際に起きたこと
この5つ目の「一人で決めず、誰かに相談する」が、いちばん効くと感じた出来事があります。
職場の標的型メール訓練で、入って間もない社員が訓練メールを受け取り、開封してしまいました。ただしリンクには触らず、そこで手を止めて先輩に相談しました。ところがその先輩には訓練メールが届いていなかったため、本物か訓練かを判断できず、当時PCの担当をしていた私のところへ持ってきた——という流れだったと記憶しています。メールの中身は、転職の勧誘か、パスワード変更の案内か、そのどちらかだったと思います。正直、そこは記憶があいまいです。
この話には、私が思っていた以上のものが含まれていました。
まず、開封した時点では終わりではないということ。その社員はリンクを踏む前に止まりました。開いてしまっても、そこで手を止めて誰かに聞けば、被害はかなりの確率で防げます。
そしてもう一つ。先輩も、その場では判断できませんでした。同じメールが自分には届いていなかったからです。それでも被害が起きなかったのは、見抜けたからではなく、分からないまま次の人へ回したからです。
私に判断できた理由も、同じところにあります。私のところには、その同じメールが届いていたからです。 訓練メールは毎回全員に届くわけではなく、私自身も届く回と届かない回がありました。先輩には無く、私にはあった。見抜いたというより、たまたま手元に照合できるものがあった、それだけの差でした。
そして白状すると、私もそのメールを開封していました。リンクは踏みませんでしたが、開いてしまった時点では、相談に来た社員とまったく同じ行動です。相談を受けた側が、実は同じところでつまずいていた。PCの管理を担当していても、この程度でした。
だまされないために必要なのは、鋭い目より、分からないときに素直に人へ聞ける空気のほうかもしれません。
すぐ使えるチェックリスト
- 「元本保証」「絶対儲かる」と断定していないか
- LINEなど外部アプリや専用アプリへ誘導されていないか
- 判断を急がされていないか(今だけ・限定枠)
- お金が直接動く口座(銀行・証券)で、SMS以外の認証(認証アプリ・パスキー)を使っているか
- スマホが不自然に圏外になっていないか
- 会ったことのない相手にお金・投資を求められていないか
- 相手や業者を、公式な情報源で確認したか
家族、特に高齢の親を守るために
これらの詐欺は、SNSに不慣れな高齢の家族が標的になることも少なくありません。とくにディープフェイク動画は「テレビで見た人だから本物」と信じてしまいやすい傾向があります。次の備えが有効です。
- 「儲け話・投資の話が来たら、まず家族に相談する」——この一言だけでも、事前に共有しておく
- スマホの認証を、可能な範囲で認証アプリやパスキーに切り替えておく
- 携帯キャリアの契約に暗証番号(PIN)を設定しておく
- 「急にスマホが圏外になったらすぐ知らせて」と、SIMスワップの予兆を共有しておく
- もし入金してしまっても責めず、警察相談専用電話(#9110)や消費生活センター(188)へ早めに相談するよう伝えておく
一度お金を払ってしまった後でも、抱え込まずに早く相談するほど、被害の拡大を防げる可能性が高まります。
では自分の実家はどうか、と考えてみました。結論から言うと、まだ何も話していません。父の眼科の通院に付き添っているので、2か月に一度は必ず顔を合わせています。同じ県内に住んでいて、話す機会は十分にあります(このあたりの事情はお盆の帰省で親とお金の話に書きました)。
それでも、詐欺の話は一度もしたことがありません。避けていたわけでも、切り出しにくかったわけでもなく、ただ話題にしないまま来てしまったというのが正直なところです。「儲け話が来たら相談してほしい」というルールも、決めていません。
職場では訓練までやっているのに、実家では何もしていない。この記事を書きながら、そこに気づきました。次に眼科へ付き添うときが、ちょうどいい機会になりそうです。
まとめ
2026年のネット詐欺は、SNS型投資詐欺・SIMスワップ詐欺・ロマンス詐欺と形を変えながら、生成AIまで使ってますます巧妙になっています。しかし、どの手口も「うまい話」「急かし」「知らない相手への送金」「SMS頼みの認証」といった弱点を突いてくる点は共通しています。
手口を知り、立ち止まって確認する。認証はSMS以外も使う。そして、一人で抱えずに家族や公的な窓口に相談する。この積み重ねが、自分と大切な家族を守るいちばんの近道です。
