含み益が出た。で、いつ売る?——筆者の答えは「売らない」
2024年から始まった新NISAも2年前後が経ち、コツコツ積み立ててきた結果、含み益が出ている方が増えてきています。そこで浮かぶのが「このお金、いつ売ればいいんだろう?」という疑問です。
先に結論をお伝えすると、筆者の答えは**「売らない」**です。新NISAは老後資金のためと決めて運用しているので、含み益が出ても売却はせず淡々と積み立てを続けるだけ。出口についても「70歳になったら定率(4%程度)で取り崩す」とあらかじめ決めており、売り時を探すこと自体をやめてしまいました。
これは筆者の目的(老後資金)に合わせた一つの方針であり、誰にでも当てはまる正解ではありません。この記事は投資助言ではなく、「後悔しにくい判断基準をどう持つか」という考え方の整理を目的に、筆者の方針とその理由、目的が違う方のための判断基準の型をお伝えします。
なぜ新NISAは「出口」の基準が作りにくいのか
旧NISAには非課税保有期間の上限があり、期限が来れば否応なく「どうするか」を考えるタイミングが訪れました。新NISAは非課税保有期間が無期限になり、この強制的に考えるタイミングが消えました。加えて、売却した投資枠が翌年に復活する仕組みもあり、「今売っても来年また枠が使える」という安心感が逆に判断を曖昧にします。自由度が高いぶん、始め方のような明確な正解が出口には存在しにくい制度だからこそ、判断基準は自分自身で用意しておく必要があります。
筆者が「売り時を考えること」をやめた3つの理由
理由1: 目的が「老後資金」だから、今売る必要がない
新NISAのお金は10年20年先に使う老後資金です。目先の含み益に反応して売るのは目的と行動がずれています。目的を先に決めてしまえば「今売るべきか」という問い自体が発生しません。含み益が増えても減っても、やることは「淡々と積み立てる」だけです。
理由2: 売買タイミングを考えるより、入金力UPと支出見直しの方が効率的だから
「安く買って高く売る」タイミングを当て続けるのはプロでも難しいと言われます。その読めない値動きに頭を悩ませる時間があるなら、収入(入金力)を上げる工夫や支出の見直しに使った方がよほど効率的だと筆者は考えています。
| 比較 | 売買タイミングの工夫 | 入金力UP・支出見直し |
|---|---|---|
| コントロール | 市場次第で制御できない | 自分の努力で変えられる |
| 再現性 | 当たっても次も当たるとは限らない | 一度見直せば効果が続く |
| 精神的負担 | 値動きが気になり消耗しやすい | 相場を見ずに済み気楽 |
毎月の積立額を少し増やす、使っていないサブスクを解約する——こうした行動は市場がどう動こうと確実に資産形成にプラスに働きます。不確実な「売り時当て」より確実な「入金と節約」。これが筆者の投資への向き合い方の軸です。
具体的に筆者が行った支出見直しは、保険の見直しと、通信費(スマホ・自宅回線)の見直しの2つです。また、サブスクリプションについては契約名・金額・満足度をスプレッドシートに一覧化して管理しており、満足度の低いものから見直しの対象にしています。特別なことはしていませんが、「見える化」しておくだけでも無駄な支出には気づきやすくなります。
理由3: 出口を「70歳から定率で取り崩す」と先に決めてあるから
出口戦略で一番怖いのは「その時の気分」で決めてしまうことです。だから筆者は出口を今のうちにルール化しました。70歳になったら、資産額の4%程度を目安に定率で取り崩していく——これだけです。
「毎年資産額の4%程度を取り崩す」という考え方は、米国市場のデータに基づく研究(トリニティスタディなど)に由来する海外発の目安で、日本の市場環境や税制にそのまま当てはまるとは限りません。絶対視はせず「定率で少しずつ取り崩せば資産の寿命を延ばしながら使える」という枠組みとして採用しており、実行が近づいたら見直すつもりです。先に出口を決めておけば、50代・60代で相場が上下しても「やることは積み立ての継続だけ」と割り切れます。
なぜ「70歳から」なのかも補足します。日本人男性の平均寿命は81歳程度ですが、想定より長生きするリスクを考えると平均寿命だけを基準にするのは心もとなく、筆者は95歳まで生きる可能性も見込んでライフプランを組んでいます。70歳までは可能な範囲で年金の受給開始を繰り下げながら働き、70歳以降は年金と資産の取り崩しを組み合わせて生活していく、というのが今のところのイメージです。具体的なライフプランを描いておくと、「何歳から」「どのくらいの率で」という数字を自分の状況に沿って決めやすくなります。
目的が違えば、出口の型も変わる——5つの判断基準
筆者の方針は「老後資金」という目的あってこそ。資金の目的が違えば、合う出口の型も変わります。よく使われる基準の型を5つ、要点だけ紹介します。
| 型 | 一言で言うと |
|---|---|
| ①ライフイベント逆算型 | 使う時期が決まっている資金をイベントの1〜3年前から段階的に売却 |
| ②ルールベース型 | 「+20%で一部売却」など数値ルールを先に決め機械的に実行 |
| ③時間分散取り崩し型(筆者採用) | 数年〜数十年かけて一定額・一定割合ずつ取り崩しリスクを平均化 |
| ④リバランス型 | 資産配分が崩れたら、増えた分を売って元の配分に戻す |
| ⑤非課税枠再利用型 | 枠が翌年復活する仕組みを踏まえ、年内売却→翌年再投資 |
いずれも「これが正解」ではなく、自分の状況に合わせて選んだり組み合わせたりするための一例です。
よくある後悔パターンとチェックリスト
出口戦略を考えずに含み益を眺めていると、次のような後悔につながりやすいと言われます。事前に基準を決めていなかったことが根っこにあるケースがほとんどです。
- 上がり続けると信じて先延ばしにし、その後の下落で利益の大部分を失う
- 逆に少しの下落で不安になり、長期視点を持たずに全部売却してしまう
- SNSの声に影響され、自分の目的と無関係なタイミングで売買してしまう
- 税金や手数料などのコストを考えずに、感覚だけで売却額を決めてしまう
筆者が「売らない・70歳から定率取り崩し」と先に決めているのも、その場の感情で動くリスクを断つためです。以下を書き出しておくと、自分の出口戦略を整理しやすくなります(参考までに筆者の場合も添えます)。
| チェック項目 | 筆者の場合 |
|---|---|
| ①資金の目的 | 老後資金 |
| ②使用予定時期 | 70歳から |
| ③採用する基準 | 時間分散の取り崩し型 |
| ④数値・時期の具体化 | 定率4%程度で取り崩し |
| ⑤見直しタイミング | 実行が近づいたら率を再検討 |
一度決めたら固定せず、ライフプランの変化に応じて定期的に見直す前提で考えるとよいでしょう。基準を決めた後は、売り時のことは忘れて入金力を上げる工夫と支出の見直しに時間を使うことをおすすめします。資産形成の土台を太くするのは、結局のところ市場の読みではなく毎月の入金と家計の健全さだからです。
まとめ
新NISAは「始め方」の情報は充実してきましたが、「売り方・出口戦略」の判断基準を持てていない方はまだ多いのが実情です。非課税期間無期限・売却枠復活という柔軟な制度だからこそ、「いつ売るか」は自分自身で決める必要があります。
筆者の答えは「老後資金と決めて売らずに積み立て、出口は70歳から定率4%程度の取り崩し」というシンプルなものです。これは筆者の目的に合わせた一例であり、正解ではありません。大切なのは、含み益に気持ちが揺れる前に自分なりの基準を1つ決めておくこと。そして基準を決めたら、入金力と支出の改善にエネルギーを向けることだと考えています。
なお、この記事は筆者個人の方針と一般的な考え方の整理を目的としたものであり、特定の売買や商品を推奨するものではありません。実際の投資判断にあたっては、ご自身のライフプランやリスク許容度を踏まえたうえで、必要に応じて金融機関や専門家にご相談ください。