「5項目のうち1つしか把握できていない」と書いたあとで

先日、お盆の帰省で親とお金の話|最低限確認したい5つのことという記事を書いた。5項目を挙げておきながら、筆者が押さえられているのは「かかりつけ医・持病」の1つだけだと白状した記事だ。

書き終えて一番引っかかったのは、介護だった。口座や保険は「いざとなったら探せる」情報だが、介護費用は違う。必要になった瞬間から毎月出ていき、それが何年続くか分からない。

そこで今回は一段進めて、「うちの実家は、いくら準備できているのか」を扱う。ただし、いくら要るのかを知らないまま聞いても答えを受け止められない。まずは調べた。

介護にかかるお金の「相場」

広く参照されているのが、生命保険文化センターの全国実態調査だ。介護を経験した人への調査で、次の数字が出ている。

項目平均
介護期間55.0か月(4年7か月)
月々の費用9.0万円(在宅5.3万円/施設13.8万円)
一時的な費用(住宅改造・介護ベッド購入など)47.2万円

掛け合わせると47.2万円+(9.0万円×55.0か月)でおよそ540万円。「なんとかなりそう」に見えるが、場所によって月額が2.6倍ほど変わり、しかも期間が読めない。仮に施設で10年続けば、月13.8万円×120か月で1,600万円を超える。

相場は総額の平均ではなく、「月いくら出ていくか」と「何年続き得るか」を分けて見たほうがいい。

公的介護保険は、どこまで見てくれるのか

自己負担は1割・2割・3割のどれか

自己負担割合は所得で3段階に分かれる。判定には、本人の合計所得金額と、同一世帯の第1号被保険者の「年金収入+その他の合計所得金額」の両方を使う。

負担割合本人の合計所得金額世帯の年金収入等(単身/2人以上)
3割220万円以上340万円以上/463万円以上
2割160万円以上280万円以上/346万円以上
1割上記に該当しない場合

判定は毎年見直され、対象者には「介護保険負担割合証」が交付される。親がすでに要介護認定を受けているなら、負担割合は紙で確認できる。残高を聞かずに分かる、数少ない情報だ。

使える量には上限がある

見落とされやすいのが、1割負担なら無限に使えるわけではない点だ。在宅では、要介護度ごとに1か月に使える量の上限(区分支給限度基準額)が単位数で決まっている。

区分上限区分上限
要支援15,032単位要介護219,705単位
要支援210,531単位要介護327,048単位
要介護116,765単位要介護430,938単位
要介護536,217単位

1単位はおおむね10円〜10.7円で、サービスの種類や地域によって異なる。上限を超えて使った分は保険が効かず全額自己負担になる場合がある。在宅の費用が家庭ごとに散らばるのは、ここが効いているためだ。

払いすぎた分が戻る仕組みもある

一方で、1か月の自己負担額が一定額を超えた分が払い戻される「高額介護サービス費」がある。

区分1か月の上限額
課税所得690万円以上140,100円
課税所得380万〜690万円未満93,000円
課税所得380万円未満(住民税課税)44,400円
世帯全員が住民税非課税24,600円(一部は個人15,000円)
生活保護受給者など15,000円

原則として申請が必要で、考え方は医療費の高額療養費に近い。

ただし最も大事な注意点がある。上限が効くのは「介護保険サービスの自己負担分」だけだ。施設の食費・居住費、おむつ代、日用品費、家賃や光熱費といった生活費は対象外になる。冒頭の月9.0万円が上限額を大きく上回るのは、このためだ。

実家が賃貸だと、どこが変わるのか

ここからはわが家の事情だ。前記事のとおり、実家は賃貸である。5項目のうち「登記・不動産」が該当なしなのも、把握できているからではなく持ち家がないからだった。介護費用の解説は持ち家前提のものが多いが、賃貸だと少なくとも3つ論点が変わる。

1. 手すりを付けるにも、大家の承諾がいる

介護保険には住宅改修費の支給制度があり、手すりの取り付けや段差解消などに支給限度基準額20万円(うち1〜3割が自己負担)の枠が使える。ただし改修する住宅が本人の所有でない場合、所有者の承諾書が必要になる。工事前に市区町村へ申請することも条件で、着工後の申請は対象外になる場合がある。

承諾が得られないこともある。代替になるのが、工事を伴わない福祉用具のレンタル(据え置き型の手すりなど)だ。賃貸なら、改修より先にレンタルで代替できないかを考える順番になりやすい。

2. 施設に入っても、家賃が消えない

持ち家なら、入居後に売却や賃貸に回す選択肢がある。賃貸にはそれがない。施設の月額費用と家賃を二重に払う期間が生まれる可能性がある。

かといって早々に引き払えば、「やっぱり在宅に戻る」という選択肢が消える。両親の片方だけが施設に入る場合は、残る親の住まいとして家が必要で、引き払うこと自体ができない。

賃貸の実家では、「介護がいくらか」と同時に「家をいつまで維持するか」の判断が要る。

実家の家賃は、だいたいの相場感は分かっている。ただし、次の更新がいつで、更新料がいくらかかるのかまでは把握していない。

3. 「持ち家がない=有利」とは限らない

施設の食費・居住費を軽減する「負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)」という制度がある。所得だけでなく、預貯金等の額にも要件があるのが特徴だ。

利用者負担段階単身夫婦
第1段階1,000万円以下2,000万円以下
第2段階650万円以下1,650万円以下
第3段階①550万円以下1,550万円以下
第3段階②500万円以下1,500万円以下

ここで見られるのは預貯金や有価証券であって、居住用の不動産ではない。家を持たない分を現金で厚めに持っている家庭ほど、この軽減の要件から外れる場合がある。「賃貸だから身軽」と単純にまとめられない理由は、ここにもある。

費用を誰が出すのか——うちの場合

介護は「いくらかかるか」と同じくらい、「誰が出すか」が効いてくる。ここは自分の家のことを書いておきたい。

筆者には兄が2人いる。ひとりは県外で生活していて、もうひとりは県内にいるが、自分の生活で手一杯に見える。結果として、費用の分担も含めて、自分が親の面倒を見るつもりでいる。

ひとつ正確に書いておくと、これは兄弟で話し合って決めたことではない。 状況を見て、自分がそう見込んでいる、というだけだ。

介護の記事はたいてい「兄弟で分担しましょう」「早めに話し合いましょう」と書く。それは正しいと思う。ただ、うちはその話し合いがまだできていない。兄弟がいることと、話し合えていることは別だった。

で、実家はいくら準備できているのか

ここからが本題のはずだった。

今回のお盆では、両親に会っていない。直近で顔を合わせたのは7月3日で、次の機会は9月19日、父の通院に付き添うときだ。

だから、分かったことはほとんどない。墓じまいと永代供養にかかった費用は、金額を把握していない。今の生活費が年金だけで足りているのか、貯金を取り崩しているのかも分からない。在宅か施設かについても、本人たちに確認したことはなく、できる限り在宅だろうと自分で見込んでいるだけだ。

分かる範囲のことだけ書いておく。実家にはすでに手すりなどの備えがある。母の通院先や常用薬については、以前から知っている範囲のまま変わらない。

聞けなかったことを、どう扱うか

切り出せなかった、というより、切り出す場面そのものがまだ来ていない。次に会うのは9月19日で、そこが最初の機会になる。

ひとつ先に書いておくと、「調べようとしたけれど分からなかった」も、それ自体が結果だ。 前記事のとおり、筆者は親と同じ県内に住み、2か月に一度は顔を合わせている。会う機会自体は、少なくないほうだと思う。それでも、まだ一度も切り出せていない。機会の多さと、実際に聞けるかどうかは別問題だった。

金額が分からなくても、今日からできること

親の準備状況が分からないままでも、手をつけられることはある。

  1. 自分側でいくら出せるかを計算する。 親の残高は聞かないと分からないが、自分の手元から出せる額は今日計算できる。生活防衛資金とは切り分けたい。
  2. 実家の地域の地域包括支援センターを調べておく。 介護の相談窓口で、市区町村のサイトから担当エリアが分かる。親に何も聞かずに、場所と電話番号まで押さえられる。
  3. 公的な保障の全体像を先に押さえる。 介護保険は公的保障の一部で、医療や年金と組み合わせて見ないと必要額を見誤る。要介護認定は申請から結果が出るまで時間がかかる点も頭に入れておきたい。
  4. 兄弟姉妹がいるなら、金額より先に「誰が窓口になるか」をはっきりさせる。 費用分担は、窓口が決まらないと前に進みにくい。ただし前述のとおり、筆者自身はまだ話し合えていない。書いている本人ができていないので、これは自分への宿題でもある。

まとめ

調べて分かったのは、介護費用は「総額いくら」という一つの数字では持てない、ということだった。在宅か施設かで月額が2倍以上変わり、期間は読めず、上限が効くのは自己負担分だけで、生活費は別に出ていく。実家が賃貸なら、そこに「家をいつまで持つか」の判断が乗る。

親がいくら準備できているのかは、まだ分からない。それでも、必要になる側の目盛りは先に作れた。目盛りを持って帰るのと、手ぶらで帰るのとでは、同じ会話でも拾えるものが違うはずだ。

なお本記事は一般的な制度の整理と筆者個人の記録であり、特定の判断や手続きを推奨するものではない。負担割合や限度額、各種軽減制度の要件は改正される場合があり、運用の細部も市区町村によって異なる場合がある。実際の手続きにあたっては、お住まいの市区町村や地域包括支援センターの公式情報で最新の内容を確認してほしい。


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